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大原・周辺の散策
京都のずっと北方、比叡山のまだ北に大 原がある。山に囲まれた静かな淋しい"かくれ里'ともいえるところである。
大原の里には、今から約800年ほど前の世界が今も息づいている。
壇ノ浦で平家が滅亡したのが文治元年(1185)で、その時、入水された安徳天皇の母君である建礼門院(徳子・平清盛の娘)は悲しくも源氏に助けられた。
その悲しみとともに女院はその余生を大原の草生の里で送ることになる。
その当時の寂光院のあたりは、現在よりもさらに草深く淋しいところであったろう。
岩根ふみたれかはとはんならの葉の そよぐは鹿の渡るなりけり─平家物話─
だが、今日も観光客が去ったあとの夕暮れには、やはり800年前の静けさとその自然とがよみがえるようである。
大原の魅力は、この800年の昔の世界が、ほとんどくずされることなく残されていることである。
緑羅の垣も、翠黛の山も……。農家の石垣のある道が、平家物譜の世界へあなたを導いてくれるにちがいない。
惟喬親王や阿波内待のお墓のあるあたりには、まだまだ木当の自然がある。
もう一つ、838年に中国に渡った円仁(慈覚大師)が仏教音楽である梵唄声明を学び、大原の地を魚山としてその根本道場を開いた、来迎院、三千院、勝林院 のあたりにその昔を見ることができる。
大原の里には自然がある。
田園の生活があって、私達の忘れていたふる里の歌が流れている。
茅葺屋根の残る民家の間に、独特の紫色の紫蘇畑が広がる。
この紫蘇を使った、紫色の酸味のある柴漬の味にも素朴な昔の心を思い出させてくれる。
春の桜の頃には、明るく、悲しい物語の世界の旅ではないが、豊かな生命にあふれた自然がある。
秋の紅葉の頃には、平家物語の文章のままに、枯葉の道をたどることができる。
また冬には、静寂そのものの無の世界が旅人を迎えてくれる。
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大原の 里は、花尻橋からはじまる。
山間の曲がりくねった道をバスに揺られている時、どんな所に連れていかれるのか、
という不安があろう。
それも、このそう広くない平地を前にして、ホッとする。
秋ならば黄色の稲穂がどこまでも澄んだ青い空の下にある。花尻橋から間もなくで、目的地の大原のバス停で下車すれば、北に向かって左手の奥が寂光院、右手 の山ふところ近くには三千院グループがある。
パス道を東に渡って、左へとる道は呂川に沿って三千院に通じる。途中には、とろろめし、とろろそば、とろろ汁、お茶漬、おにぎりなどを食べさせてくれる、 楽しい緋もうせんの床几のある茶店がいくつも並んでいる。
その中の1軒では、大原女スタイルの娘さんがカメラの前に立ってくれるサービスもある。甘党ならばおはぎ、よもぎもちなどがどの店にもあるので、立ち寄る のもよいだろう。
慈覚大師円仁は中国から仏教音楽を伝え、この大原の地を梵唄声明(ぼんばいしょうみょう)の根本道場にしたが、今ほとりを歩いている川の名が呂川、北を流 れているのが律川で、合わせて呂律ということになる。
大原といえば 三千院への道の入口に「柴漬」が名物で、これもどの店にも必ず置いてある。
この酸味のあ る漬物で番茶を飲みながら、紅葉の散るのを眺めるのも風情のあるものだ。
呂川に沿って魚山橋に登り着けば、左手に三千院の高い石垣と桜、かえでの馬場がある。春は桜の花弁が降り、秋に紅葉が人々のほほを染める。
三千院の南側の細い道は、来迎院を経て音無の滝に通じている。この道は2人だけの語らいの道で、春には山桜が、初夏は青葉が、秋には紅葉が道をうめつく す。
三千院の前にも茶店が並び、とろろめし、甘酒などがある。冬にはここでこたつを囲んでの昼食ができる。
雪の降る音を聞きながら、すばらしい憩いの時があるだろう。
三千院の前を北に進み、律川を渡れば後鳥羽、順徳の両帝の大原陵があり、その向かい側が実光院である。
ここの柴漬も、独特の風味のあることで好む人が多い。突き当たりの堂々とした建物が勝林院、この前を下がればすぐに血天井で知られる宝泉院、さらにどんど ん下がれば出発点の大原バス停に戻ることができる。
この道は人影も少ない、野の花と田園の道である。
大原バス停から大原川を渡り、寂光院への道に入る。寂光院のあるあたり一帯を"草生の胆"と呼び、寂光院への里の道は、もっとも田園の詩情があふれる所で ある。進むほどに山が迫り、柴漬の材料にするしその畑、コスモス、古びた石垣と土塀、赤く色づいた柿の実、そして青い空、ススキ、かや葺き屋根の農家。
私達が忘れていたものが、ひとつひとつよみがえってくるような道である。草生川にかかる橋を渡って本通りに出れば、すぐに大原西陵、その隣りが寂光院であ る。
さらに北に足をのばせば、左手の杉林の中に石段があり、その奥にひっそりと小さな五輪石塔の並ぶ、女院に仕えた阿波内待の墓がある。
帰途は、今たどってきた道を、そのまま大原バス停まで戻ることになる。
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主な見ど ころ
三干院
宸殿からの有清園、瑠璃光庭と往生極楽院のたたずまいは、バランスのとれた絵を見るような風景である。
木立の間のシャルマンな往生極楽院、濃緑と淡緑の小さな起伏のある苔の広がり……。
3間、4間の単層入母屋造りこけら葺きの往生極楽院の内部にある阿弥陀三尊像の前に座わると、かなりの不信心な人も、いつの間にか、仏の世界に入ってしま う独特の雰囲気をもった仏像である。
客殿の前の聚碧園は、洛北随一の名園の名が高い。一見の価値がある。
来迎院
声明音律の総本山魚山の中心で、呂川に沿って登ればカエデの古木があり、静かな自然の中にその本堂がある。かつての魚山の栄光の跡を見せる石垣が所々に 残っているのも、その静けさをいっそうひき立てているようだ。
鐘楼には永享7年(1435)の銘のある鐘がある。
三千院あたりのにぎわいも、ここまでくればうそのようである。
勝林院
入母屋造り桧皮葺きの堂宇で、、正拠阿弥陀堂ともいわれている。大原問答の木札があがっているのは、文治2年(1186)に法然上人がここで多くの僧侶の 疑問点にいちいち明快に答えて、称名念仏の教えの「誰でもの救い」であることを説いた。
寂光院
翠黛山の麓にあって、入口の石段の両側にはカエデの古木が並び、秋の日、雪の日、それぞれ静かに平家物語の世界が再現されてくる。
入口のあたりに"静思沈黙"とあるが、この寺も静かな心でお参りしたいものである。
本堂、書院、汀の池、みぎわ桜・・・すべて小じんまりとした美しさがある。
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